桑折 道済
27年度の実施計画
平成27年度は、黒色度の制御を伴う粒子合成法を確立し、より彩度の高い単色構造色の発現を実現するとともに、黒色粒子の吸収が彩度に与える影響の解明を目指す。
(1)モノマー構成分子組成の不規則性と粒子の黒色度、構造色の彩度の相関性の抽出・一般化を行い、絶対反射スペクトル測定より最適な黒色度を決定する。
(2)単色構造色の発現機構解明のため、粒子サイズのバラツキ度合い(変動係数)と粒子配列を厳密に制御した材料作製と評価を行う。このために、変動係数5%の粒子作製条件を確立するとともに、変動係数を2-20%程度の間で制御可能な合成条件を探索し、確立する。
(3)ディップコーター(購入予定)を用いて単層状態での粒子配列を制御した材料を作製し、絶対反射スペクトル測定で詳細に解析し粒子サイズの不規則性(変動係数)と粒子配列が単色構造色の発現に与える影響の解明を目指す。
(4)我々のオリジナル材料である黒色粒子を基盤とし、領域内での共同研究等により、自然界におけるアモルファス系単色構造色との関連性の抽出と計算科学的アプローチによる発色モデルの構築や、各種加工プロセスを駆使した光学素子の開発等を検討する。
27年度の実施報告
本研究では,鳥類の発色から着想したバイオミメティック構造色材料の開発ならびにインク化への応用を目的としている。孔雀の羽は構造色による色であり,羽に含まれる黒色メラニン顆粒が形成する微細なナノ構造に光があたることで鮮やかな発色が起こっている。
我々はこれまでに,メラニン顆粒の前駆体であるアミノ酸ドーパの類似物質「ドーパミン」を原料とし,メラニン顆粒を模倣した単分散な「ポリドーパミン黒色粒子」の作製に成功し,この材料が鮮やかな構造色を発現することを報告してきた。
今年度はまず,インク化への応用を達成する上で大きな課題であった固体状態での視認性の高い構造発色の実現を目指した。ポリドーパミン黒色粒子からなる構造色材料は,粒子黒色度が高いことから個体状態にすると吸収がまさり視認性が非常に低下した。そこで,汎用ラテックスであるポリスチレン粒子をコアとし,ポリドーパミンを薄膜シェル層とするコア-シェル粒子を新たに設計合成した。
その結果,ポリドーパミンシェル層の厚みを任意に制御することで粒子黒色度が制御でき,得られる構造色材料の視認性は劇的に向上した。また,ディップコーターを用いることで,積層数を制御した粒子配列方法を行い,積層膜の厚みと構造発色の関係性を導くことに成功した。
28年度の実施計画
平成28年度は、ポリドーパミンを基盤とする高分子微粒子の大量合成法を確立し、多彩な発色の構造色材料の開発と,粒子配列制御による発色への影響の相関性を抽出する。
(1)虹色並びに非虹色である単色構造色の発現機構解明のため、平成27年度に得た知見をもとに、黒色度を制御した粒子の大量合成法を確立する。
(2)微細領域での粒子配列を厳密に制御した材料を作製し、絶対反射スペクトル測定で詳細に解析し粒子配列が構造色の発現に与える影響を調査する。
(3)我々のオリジナル材料である黒色粒子を基盤とし、領域内での共同研究等により、自然界における鳥類などのアモルファス系単色構造色との関連性の抽出と計算科学的アプローチによる発色モデルの構築を行う。
28年度の実施報告
雄のクジャクの羽毛は構造色による色であり,羽毛内部に含まれるメラニン顆粒が形成する微細なナノ構造に光があたることで鮮やかな発色が起こっている。本研究では,クジャクの羽毛の発色機構から着想したバイオミメティック構造色材料の開発ならびにインク化への応用を目的とした。自然界での構造発色において重要な役割りを担っているメラニンの模倣体としてポリドーパミンを用い,ポリドーパミンを基盤とする微粒子材料の集積により構造色材料の開発を行なった。ポリスチレン粒子をコア材とし,ポリドーパミン層をシェル層とする階層構造粒子を設計・作製することでインク化への応用を達成する上で大きな課題であった固体状態での視認性の高い
構造発色を実現した。ポリドーパミン層の厚みを制御することで,粒子の集積挙動に大きな影響が出ることを見出し,素材となる粒子を精密に制御することで,最終的に作製される構造色ペレット材料の構造色の角度依存性を制御することに成功した。さらに,ディップコーターを用いることで,積層数を制御した粒子配列方法を行い,積層膜の厚みと構造発色の関係性を導いた。また,インクジェット装置による粒子分散液の塗布により,微細領域での粒子配列を制御し,インクジェット法により視認性の高い構造発色を達成した。
また,複数の粒径の粒子混合による中間色の発現,粒子を濃縮状態で固定した球状・繊維状3次元構造色材料の開発にも成功し,構造発色を基盤とするインク状色材開発において重要な基盤技術の確立に成功した。