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B01-4班

28年度の実施計画

1)植物保護グループ
フェロモンブレンドの検出モデルの一般化のため、2成分系のガ類に対象を絞り、フェロモン検出機構の解明を進める。これにより2成分の比率を検出する数理モデルを一般化し、複数成分から成るガス検知等、工学応用可能な検出モデルを完成する。
昆虫の食害によりダイズに誘導される成分のうち、昆虫由来エリシターにより誘導される成分を明らかにする。

2)化学センサグループ
アリの巣仲間識別センサを規範とし、約100本の受容神経をユニットとする多成分匂いセンサの機能性を抽出、作動原理を明らかにする。平成27年度には、センサユニット内で働く匂い運搬タンパク質と受容体タンパク質群を絞り込むとともに、それらを発現する受容神経相互の連絡を示唆する構造を発見した。平成28年度には、アリの匂い受容体タンパク質の機能特性解析を進め,得られた成果をB01-2班と協力して進めている数理モデルに組み込み,多成分の匂い識別アルゴリズムの理解を深める.並行して,電導プラスチックを素材とした約100個のニューロン素子を模したデバイスを作成し,出力電位を解析することで,複数の匂い検出器の設計を構成論的に探索する.得られる成果は,複数のガス成分検出器等に利用可能と期待される.

3)極限環境生物グループ
ネムリユスリカの驚異的な乾燥耐性システムの解析をネムリユスリカおよび乾燥耐性を持たない昆虫由来培養細胞等のサブセルラー・サイズ構造からアプローチし、細胞の常温保存の技術開発の手掛かりとする。細胞の常温保存は、農学・医学の応用上、極めて重要である。

28年度の実績報告概要

昆虫-昆虫相互作用グループでは,1)カミキリムシ科とカメムシ目の害虫において,特定の振動が行動阻害や忌避をおこすことを明らかにした.また,超磁歪素子を用いた加振装置によって,これらの害虫の行動制御がおこることを示した.これらの成果は,複数の害虫種に対する,振動を用いた新しい防除技術につながる.2)ガ類フェロモンブレンド受容機構の解明では,これまでに同定した6種類の性フェロモン受容体において,受容体発現細胞の割合はフェロモンブレンドの構成比率と正の相関関係にあることを示した.
このことから,多くのガ類では、受容体発現細胞の割合を調節することによりフェロモンブレンドを受容する機構が存在することが示唆された.3)嗅覚センサの受容素子として容易に扱える匂い物質結合タンパク質(CpLipやCSP)について,CpLipの介在がセンサの機能亢進(100倍の感度上昇)に寄与することの直接証明に成功した.また,CpLipのpH依存的構造変化を解明し,匂い物質の脱着をpHで制御する方法が見つかった.アリの敵・味方識別センサでは,100種類超の嗅覚受容体群が遺伝子重複を繰り返し多様化してきたことを示し,そのリガンド探索をして一部の応答特性を調べた.また,これらの受容体をもつ100個超の神経が互いに連絡して全体でロバストな匂いパターン解析機能を発揮する嗅覚センサユニットを形成していることを世界で初めて提唱した.
植物-微生物/昆虫相互作用グループでは,4)コシヒカリイネからクローニングした新規ウイルス抵抗性遺伝子は,ウイルス,細菌,カビ,線虫,昆虫と極めて広範囲の侵略者に抵抗性を示す植物遺伝子群であるNB-LRRクラスのレセプター遺伝子であることを見出した.
極限環境生物グループでは,5)乾燥ストレス感受性昆虫の培養細胞に乾燥耐性を付与するためには複数の遺伝子の導入が必要であり,その方法を確立した.

(アーカイブ)

 

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