公募研究班(平成25年度)

小林 俊一

25年度の実施計画

1.ゴカイの構造・動作解析

ゴカイの産卵時における遊泳の動きの映像から動作解析を行い,突起物の効果,ロボット開発にあたって有効な機能について検討する。

2.ベン毛虫の構造・動作解析

ラフィド藻など,植物性ベン毛虫の遊泳時の映像から動作解析を行い,突起物の効果,ロボット開発にあたって有効な機能について検討する。

3.生物規範型推進ロボットの設計

(A) 波動型による3次元運動

すでに開発済の屈曲ロボットを,ゴカイの構造・動作解析の結果をもとに発展させたものを設計する。具体的には平面波動型に3次元的な突起物を設置し,3次元的な運動を実現させる。

(B) らせん回転よる3次元運動

植物性べん毛虫に近いが,バクテリアのべん毛の回転運動に近いらせん変形のような形態で,バクテリア菌体に相当する本体に回転するモータを設置し,らせん状のべん毛に相当するところに突起物が付いているようなロボットも設計する。ただし,この推進ロボットの設計では,次年度に行う予定である推進力の測定用に特化させて行う。

25年度の実施報告

1.ゴカイの構造・動作解析

ゴカイの産卵時における遊泳の映像から,いぼ足の動き(有効打,回復打,伸縮)と体全体の屈曲運動との関係を詳細に解析し,遊泳の推進に寄与する効果について検討した。この解析結果を考慮し,全方向移動が可能な流体内推進ロボットの開発が可能となる様,いぼ足と体軸に相当する機構の有効な動作方法について考察した。

2.ベン毛虫の構造・動作解析

シャットネラ(ラフィド藻)のべん毛の動きによる遊泳映像から,その移動について計測した。

3.生物規範型推進ロボットの設計

(A) 波動型による3次元運動

ゴカイの遊泳動作解析の結果から考慮した,全方向移動が可能な流体内推進ロボットの開発にあたっての有効な動作方法の考察結果に基づき,新規ロボットの設計(いぼ足と体軸に相当する機構の詳細,アクチュエータの選定,防水機構,通信・制御方法の検討等)を行った。なお,いぼ足に相当する機構は揺動するフィンで用いるが,そのフィンに角度をもたせることによって水深方向への遊泳を追加させ,3次元的な運動を実現する設計をした。

(B) らせん回転よる3次元運動

また,生物のべん毛の回転運動による,らせん変形のような形態で,べん毛相当部に突起物が付いている全方向推進の流体内推進ロボットを設計するために,比較的大型な基礎モデルを製作して実験を行った。低レイノルズ数領域での流体内推進を行うことを想定し,高粘度のグリセリン中で動作させ,回転速度と推進力を計測した.突起物の形状の変化により,前後の推進力方向の変化を確認した。

26年度の実施計画

1.生物の動作解析
平成25年度からの継続である,体表面が粗いゴカイとベン毛虫との動きを高速度カメラ顕微鏡で撮影し,その画像から動作解析を行い,突起物(いぼ足)の効果,ロボット開発にあたって有効な機能をさらに検討する。特に平成26年度はカラーカメラによってさらに詳細に検討するものである。

2.生物規範型推進ロボットの製作とその推進特性の検討
平成25年度に設計した3次元的な運動をする全方向推進ロボットを製作する。
なお,生物の動作解析結果は平成26年度も継続するため,その結 果をすぐに反映できるように,構造と動作プログラムはフレキシブルに変更できるよう工夫する。製作した全方向推進ロボットは水中で動作させ, その推進速度や推進力を計測する。その際,フィンの挙動を変えて動作させ,流れ場の可視化も行い, その次に水から高粘性液体に変更して同様の 実験を行う。これらの結果により同推進ロボットの推進特性を検討する。

26年度の実施報告

全方向移動が可能な生物規範型流体内推進ロボットを開発するために,26年度は以下に示すゴカイの動作解析と推進ロボットの開発に取り組んだ。

1.ゴカイの遊泳動作解析
25年度から引き続き,ゴカイの産卵時における遊泳を撮影,その映像から,いぼ足の動き(有効打,回復打,伸縮)と体全体の屈曲運動との関係を詳細に解析し,遊泳の推進に寄与する効果について検討した。この解析結果について,25年度から行なっている全方向移動が可能な流体内推進ロボットの開発の改善点を考慮して検討した。特に,多数あるいぼ足の間隔は極めて狭いためにいぼ足同士が干渉しあうが,それでもしなやかに動作する点に着目,いぼ足の柔軟性が大きく寄与していることに注目して解析した。

2.全方向移動型生物規範推進ロボットの開発
ゴカイの産卵時における遊泳動作解析の結果から考慮した新規ロボットの設計は25年度において行なったので,26年度は実際にロボットを開発した。左右のいぼ足と体軸を再現する2枚のフィン,3個のサーボモータ,マイクロコントローラから成るユニットを用意,全12ユニットによる構成の推進ロボットを製作した。防水性の問題から,水中実験においては6ユニットで動作させ,その映像の解析を行なった。その結果,全方向に確実に移動できることを確認した。さらに,3次元への移動の可能性も得られるような結果も得た。
また,26年度に行なったゴカイの産卵時遊泳動作の新たな解析結果を反映した設計指針を検討し,今後の同ロボットの改善のための基礎も得た。

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