A01班
28年度の実施計画
本年度は研究期間の最終年度であり、これまで蓄積してきたデータをさらに充実させるとともに、これまでの研究成果の取りまとめを行う。生物系2小班では、昨年度までに引き続き、昆虫、魚類から走査型電子顕微鏡(SEM)画像などの生物画像データを収集する。野村小班では、B01-2班およびB01-4班での研究に寄与するために昆虫のモスアイ構造や構造色に重点を置いている。また、篠原小班では、B01-1班およびB01-3班での応用研究に向けた魚類のデータ提供を図っている。これらの方針は今年度も継続する。あわせて各構造に関する機能や、対象生物群の生息環境、系統関係等の生物学的情報をまとめたテキストデータを作成する。生物系データの蓄積により、バイオミメティクスに関する深い知識と幅広い発想が期待できる。
情報系担当2小班では、昨年度開始した「バイオミメティクス・データ検索基盤」試作システムの領域内での試験運用結果に基づき、これまでに開発してきたデータベースと検索システムの充実をはかる。領域内他班に対する画像検索システムの公開を継続し、フィードバック情報を集積してシステムの高度化を図るとともに、研究期間終了後の持続的な運用法についても検討する。本データベース構築の特色は、独創的な工学的発想をもたらす画像検索と、生物情報に関するオントロジーと組み合わせることで、極めて異質なデータ同士の統合を可能にし、独自の発想を実現する点にある。異分野連携の可能性を実際のシステムで示したテキストデータについては、オントロジー技術を用いて専門分野の壁を超えた検索機能を実現しつつある。C01班と連携し、社会科学的視点からの検索機能を組み込むことによって、異分野連携をさらに充実させる。
昨年度末には、本領域の活動に関連する普及啓発書の出版を実現した。また今年度、博物館を利用した企画展示を実施する。これらのアウトリーチ活動をきっかけとして、引き続き各方面への普及と人材育成、異分野連携の態勢強化を図る。さらに研究成果を発信する方法として、工学系、社会科学系の他班と連携して、学会誌等への論文投稿や、学会、講演会等における成果発表を行う。
28年度の実績報告概要
研究計画の最終年度である本年度は、本研究計画のアウトリーチ活動として、国立科学博物館における、バイオミメティクスに関する企画展の開催を行った。企画展は国立科学博物館と科研費新学術領域『生物規範工学』との共同主催で、「生き物に学びくらしに活かす―博物館とバイオミメティクス」と題し、2016年4月19日~6月12日、国立科学博物館日本館1F企画展示室および中央ホールで行われた。合計で約22万人の入場があった。
生物系2小班は、昨年度までに引き続き、昆虫、魚類から走査型電子顕微鏡(SEM)画像などの生物データを収集した。科博においては、現有2機の走査型電子顕微鏡を活用して、昆虫と魚類の微細構造の観察、写真撮影を行った。昆虫担当の野村小班は千歳科学技術大学(北海道千歳市)のナノテクノロジー支援事業に参加し、工学系研究者との共同研究を進めている。この結果、182サンプル、約5,100枚の画像を撮影し、情報系2小班に提出した。魚類では30種、約800枚の画像を作製し、提出した。
情報系2小班(長谷山小班および溝口小班)では、生物系2小班が提出したデータをデータベースに付加し、データ量の充実を図った。溝口小班ではオントロジー技術を用いて、バイオミメティクスに関連するキーワードを探索、提示するシステムのさらなる改良を図ると共に、領域内他班との連携を進めた。画像データ検索機能の実装を担当する長谷山小班では、発想支援型検索に基づく「バイオミメティクスデータ検索基盤」の試作システムのさらなる整備を進めた。昨年度領域メンバーに公開した試作システムをさらに改良し、溝口小班がインターネット公開している「生物規範工学オントロジーによるキーワード検索」の検索結果を取り入れて絞り込み検索ができるようにバージョンアップした。