領域代表あいさつ

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領域代表あいさつ

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本領域の目的

生物が有する多様性は、長い進化の過程において環境に適応した結果であり、「生物の技術体系」とも言うべき、「人間の技術体系」とは異なる「生産プロセス」「作動原理」「システム制御」によって獲得されてきたものです。
“サブセルラー・サイズ構造”とも言うべき昆虫や植物の体表面に形成されたナノ・マイクロ構造は特徴的な機能を有しており、その形成過程と機能発現機構 をもたらした「生物の技術体系」を明らかにすることは、「人間の技術体系」が内包し解決すべき喫緊の課題である、環境・資源ならびにエネルギー問題の解決 に寄与する「生物規範工学」とも言うべきパラダイムシフトをもたらします。
本領域は、自然史学、生物学、農学、材料科学、機械工学、環境科学などの学際連携により、環境政策・包括的技術ガバナンスの観点から「生物多様性」に学 び「人間の叡智」を組み合わせた技術体系を創出する。生物多様性と生物プロセスに学ぶ材料・デバイスの設計・製造を通して、技術革新と新産業育成のプラッ トフォームとなる「バイオミメティクス・データベース」を構築するとともに、生物学と工学に通じた人材を育成することを目的としています。

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本領域の内容

生物に模倣する重要性は古くから指摘されてきた。今世紀になって、ナノテクノロジーの展開によって走査電子顕微鏡が広く普及したことで、こ れまで未開拓であった「細胞内部や表面に自己組織化的に形成される数百ナノメータから数マイクロメータの“サブセルラー・サイズ構造”」とその機能が見い だされ、それらを模倣した材料の開発が注目されはじめています。生物は、有機物を中心とする限られた元素を用いて構造を形成し、様々な機能を発現すること で、持続可能性を実現しています。さらに自己組織化によって形成された構造は、「人間の技術体系とは異なる」作動原理で機能しています。“サブセルラー・ サイズ構造”が有する機能の発現機構と形成プロセスを解明することで「サブセルラー・サイズ構造の学理」を確立し、持続可能性に向けた技術革新をもたらす パラダイムシフトのヒントを見出す必要があります。
研究項目A01「生物規範基盤」では、生物多様性をデータベース化することで、オープン・イノベーション・プラットフォームの基盤となる「バイオミメティクス・データベース」を構築するとともに、生物学と工学に通じた人材を育成します。
研究項目B01「生物規範設計」では、サブセルラー・サイズ構造がもつ機能と形成プロセスを解明することによって“生物の技術体系”を明らかにするとともに、生物多様性に学ぶ材料・デバイスの戦略的設計・作製を達成します。
研究項目C01「生物規範社会学」では、環境政策に基づくソシエタル・インプリケーション(社会的関与)の観点から、新たな科学・技術としての「生物規範工学」を体系化し、その産業化を図るとともに、持続可能性社会の実現と技術革新に資することを目指します。

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期待される成果と意義

生物模倣の基盤は生物多様性にあり、膨大な生物学データから工学的発想を導きだす必要があります。「生物学から工学への技術移転」や「生物 学へのフィードバック」を可能とする「発想支援型データベース」を構築することで、オープン・イノベーション・プラットフォームが形成されます。これを実 現するためには、「生物学、工学と社会科学の連携」に基づく、総合的な研究戦略と実施体制が必要になり、本領域によって新たな学術領域が創出されるととも に、次世代を担う人材育成に大きく寄与することとなります。さらに、持続可能性に寄与する新産業創出のためには、体系化した技術が社会に受容されねばなり ません。生物を規範とすることで、持続可能性を達成するパラダイムシフト技術革新が可能になります。具体的には、生物の「動き」「構造」「制御」に着目す ることで、エネルギー消費の少ない生産工程、再生可能エネルギーと効率的なエネルギー利用・変換、汎用元素の利用、に寄与する新規材料やシステムを実現し ます。また、バイオミメティクスの国際標準化に関する提言を行い、我が国の国際競争力に資します。

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