平成25年度の公募研究

藤井 秀司

研究概要

生物の中には、形状と化学組成を巧みにコントロールすることで、高撥水性表面を獲得しているものが多数存在
する。本研究では、サブセルラーサイズの高分子微粒子からなる集合体を作製することで凹凸を形成し、その形
状が生み出す撥水性を活かし、リキッドマーブル(Water-in-Air型気液分散系)の安定化を実現する。さらに、
リキッドマーブル内部に泡が分散した多相気液分散系(Air-in-Water-in-Air型分散系)の構築、さらに多孔質
高分子材料の創出を行い、材料化学分野へ研究を展開する。微粒子の界面吸着現象は界面張力を駆動力としてお
り、現行の重力支配下における他律的エネルギー消費型のものづくりに対し、自律的省エネ型のものづくりを可
能にする。本研究を、界面化学・高分子化学を学術基盤として遂行することにより「生物規範工学」の学理の体
系化に貢献することを目的とする。

25年度の実施計画

本研究では、前述した目的を達成するために、下記項目について検討を行う。
(1)高分子微粒子の精密合成・評価
■ 微粒子の精密合成: 予備実験において、一種類の親水的表面を有する高分子微粒子で、リキッドマーブル
および泡、両気液分散系の安定化が可能であることを見出している。申請者が10年以上の研究蓄積を有する乳化
重合、分散重合【例えば、申請者ら J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 16808; J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 78
82】を駆使し、水への濡れ性が異なる高分子(ポリビニルピロリドン、ポリ(メタクリル酸ジエチルアミノエチ
ル)等)が表面に吸着したポリスチレン粒子の精密合成を行う。水への濡れ性が異なる高分子の表面吸着量が低
い場合には、シード乳化重合、シード分散重合を駆使し、粒子表面に積極的に導入する。
■ 微粒子の精密評価: 生成粒子の粒子径、形状、化学組成について、レーザー回折式粒度分布測定装置(現
有設備)、電子顕微鏡(現有設備)、元素分析装置(現有設備)を用いて評価する。特に、水の濡れ性に大きく
関与する粒子表面化学について、X線光電子分光装置(現有設備)、接触角計(購入予定)を用いて詳細に評価
する。
(2)微粒子集合体の表面凹凸構造の制御
高分子微粒子の水分散体を乾燥させることで、表面凹凸を有する粒子集合体を作製する。乾燥方法(自然乾燥、
フリーズドライ、スプレードライ)および、その条件(温度、湿度、分散体固形分濃度)と得られる表面凹凸構
造の相関を明らかにする。粒子集合体が形成する凹凸を、レーザー顕微鏡、走査型電子顕微鏡を使用して3次元
画像化し、表面粗さを数値化する。サブミクロンメートルサイズ~ミリメートルサイズの表面凹凸を有する粒子
集合体の作製を行う。特に、微粒子集合体の表面凹凸の形状評価・数値解析について、界面化学を専門とする連
携研究者である村上良博士(甲南大学)と連携して推進する。
得られた結果を基にして、微粒子表面化学、乾燥条件と粒子集合体形状の相関関係を明らかにする。また、得ら
れた結果を取りまとめ、学会発表、論文投稿を行う。

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