出口 茂
研究概要
バイオクレプティックスとは2005年に考案された造語で、“a biological reagent is used to aid a synthetic process”と定義される。これまでにも人類は、地球の生態系を支配する微生物の機能を利用して発酵食品などのバイオクレプティックスを開発してきた。化石燃料の枯渇や地球温暖化などの諸問題に対処するために従来技術からのパラダイムシフトが求められる今日では、バイオクレプティックスの重要性はますます高まっている。本研究は「サブセルラー・サイズ構造」を有する材料が生物資源の機能・有用性に学んだ新しいバイオクレプティックスの創出に真に有用であることを示すことを目的とする。具体的には、材料科学を利用した微生物機能のセンシング技術を確立し、セルロース系バイオマスからのバイオリファイナリーに資する生体触媒の高性能化に向けた分子設計指針を得る。
26年度の実施計画
1.新たに導入した高速スキャンが可能な3Dレーザー顕微鏡を利用して、ダイナミクス解析に重要な反応の初期過程を高い時間分解能で測定する手法を確立する。さらにピット形成ダイナミクスを記述する数理モデルと実験結果を比較し、酵素反応によるピット形成メカニズムを解明する。
2.プロテアーゼとゼラチンを用いた実験結果と1)で得られた数値モデルとの比較、キチナーゼやアガラーゼの活性測定などを行い、手法のさらなる一般化を図る。
3.昨年度に得られた配列情報をもとにしたドメイン構造の解析、さらには組換え実験による酵素の発現と特性化によって、深海微生物由来セルラーゼに固有の特徴を明らかにする。