小林 俊一
研究概要
体表面が粗いゴカイと植物性ベン毛虫の泳ぎに注目した,低レイノルズ数領域で推進する,3次元的に全方向移動が可能な生物規範型推進ロボットを開発することを目的とする。そのため,ゴカイと植物性ベン毛虫の構造・動作に関して検討し,その結果を踏まえて推進ロボットの設計と製作を行い,低レイノルズ数領域での3次元全方向移動を検討する。本研究の独創的な点として,体表面形態の変化によって,屈曲運動は全く同じでも,全ての方向に推進を変化できることに特長を持たせる。
26年度の実施計画
1.ゴカイの構造・動作解析
ゴカイの動きをハイスピードカメラ付顕微鏡で撮影,その画像から動作解析を行い,突起物の効果,ロボット開発にあたって有効な機能について検討する。ゴカイの構造については走査型電子顕微鏡等で検討する。なお,ゴカイについては水産研究所や養殖場などに出向いて情報収集し,自ら採集したり,養殖場からの購入等で入手する。
2.ベン毛虫の構造・動作解析
ラフィド藻など,植物性ベン毛虫の遊泳ハイスピードカメラ付顕微鏡で撮影,その画像から動作解析を行い,突起物の効果,ロボット開発にあたって有効な機能について検討する。べん毛虫の構造については走査型電子顕微鏡等で検討する。また,研究代表者が所属するエアロ・アクアバイオメカニズム学会の微生物研究者の数名からも画像を提供していただいて解析する。なお,植物性ベン毛虫は採集で入手するが,エアロ・アクアバイオメカニズム学会会員の微生物研究者からアドバイスを得る予定である。
3.生物規範型推進ロボットの設計
(A) 波動型による3次元運動
すでに開発済の屈曲ロボットを,ゴカイの構造・動作解析の結果をもとに発展させたものを設計する。具体的には平面波動型に3次元的な突起物を設置し,3次元的な運動を実現させる。
(B) らせん回転よる3次元運動
植物性べん毛虫に近いが,バクテリアのべん毛の回転運動に近いらせん変形のような形態で,バクテリア菌体に相当する本体に回転するモータを設置し,らせん状のべん毛に相当するところに突起物が付いているようなロボットも設計する。ただし,この推進ロボットの設計では,次年度に行う予定である推進力の測定用に特化させて行う。