平成26年度の公募研究

藤井 秀司

研究概要

生物の中には、形状と化学組成を巧みにコントロールすることで、高撥水性表面を獲得しているものが多数存在
する。本研究では、サブセルラーサイズの高分子微粒子からなる集合体を作製することで凹凸を形成し、その形
状が生み出す撥水性を活かし、リキッドマーブル(Water-in-Air型気液分散系)の安定化を実現する。さらに、
リキッドマーブル内部に泡が分散した多相気液分散系(Air-in-Water-in-Air型分散系)の構築、さらに多孔質
高分子材料の創出を行い、材料化学分野へ研究を展開する。微粒子の界面吸着現象は界面張力を駆動力としてお
り、現行の重力支配下における他律的エネルギー消費型のものづくりに対し、自律的省エネ型のものづくりを可
能にする。本研究を、界面化学・高分子化学を学術基盤として遂行することにより「生物規範工学」の学理の体
系化に貢献することを目的とする。

26年度の実施計画

平成26年度以降も、当該新学術領域研究のメンバーとの連携を通じて、「生物規範工学」の学理の体系化に努める。自然界で観察される微粒子の界面吸着現象をコロイド化学、高分子化学の観点から研究することで、生物規範工学の科学の確立推進に力を注ぐ。具体的には、下記2点について研究を推進する。

 

(1)           高分子微粒子表面への水の濡れ性評価

微粒子集合体が形成する表面凹凸構造が、撥水性に与える影響を精査する。粒子表面への水の濡れ性は、粒子の気液界面における吸着エネルギーと相関しているため、気液分散体の安定性を評価する上で重要な因子である。本課題では、凹凸構造を有する粒子集合体表面における水の濡れ性を接触角測定を行うことで評価し、単一粒子表面の濡れ性と比較する。

 

(2)           気液分散体の安定化と機能性材料の創出

高分子微粒子のみを安定化剤として利用し、リキッドマーブルおよびその内部に泡が分散したAir-in-Water-in-Air型多相気液分散体を作製する。申請者が開発したドロップレットローラー【申請者ら Soft Matter 2010, 6, 635】、およびフォームカラム【申請者ら Langmuir 2006, 22, 7512】を使用し、様々な条件(温度、湿度)で、気液分散体の安定性を評価する。さらに、多相気液分散体から水を蒸発させることで、多孔質高分子材料を合成する。上記の分散体、機能性材料の構造評価、および強度、比表面積等の物性評価を、電子顕微鏡、レーザー顕微鏡、微小圧縮試験機、BET装置等を用いて行う。

 

得られた結果を取りまとめ、学会発表、論文投稿を行う。平成25年度、平成26年度で取得する基礎的データを有機的に繋げることで、生物規範工学に立脚した真に使えるコロイド材料開発の実現に向けた足掛かりとしたい。

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