森本 元
研究概要
生物と工学の学際的研究分野である「バイオミメティックス(生物規範工学)」研究の一分野である「構造色」の研究を行う。鳥類の構造色は、昆虫や魚類の構造色とは異なる仕組みで発色していることが知られる。本研究は、このユニークな鳥類型の構造色の中でも、非虹色の構造色に着目し、その発色の源である羽毛内の微細構造を、色が異なる複数種について解明し、構造色の理論的基盤をカタログ的に充実させる。さらにそれらの統一的な理解(統合的統計モデルの確立)を目指す。これは「色彩に影響する羽毛内の微細構造の変化」と「それに伴う色の変化」の関係性を明らかにする研究であり、鳥類における構造色の発色メカニズムを解明することを目的とする。
28年度の実施計画
1. 本研究では前述した目的を達成するために、本年度(2年計画2年目)は、1年目に引き続き、野外での野生鳥類や飼育鳥の羽毛サンプルの収集を進めつつ、同時に、昨年度に確立した分光測定・顕微鏡計測手法を用いて、特定の種における羽毛内部構造の解明に重点を置く。本研究は、1)野外および飼育鳥からの材料(羽毛)の採集と収集、2)実験室内での分光計測定やSEM画像解析等の羽色の実験・分析より構成される。年度前半は1の採集、年度後半は2)のSEM画像解析とモデル作成を行い、論文化は通年を通じて行う。複数種を対象とする統合モデル研究も試みる。
2. 今年度は採集した特定の種の羽毛サンプルおよび収集した飼育鳥の羽毛を用いて、羽毛内微細構造の構成パターンを電子顕微鏡観察(SEM)等の手法による、羽毛内部構造の把握を引き続き進める。また、特定の種について種内での羽毛微細構造の差異のパターンを把握する。得られた結果を基にして、羽毛内微細構造と色の変化を説明する統計モデル構築を試みる。これらの研究成果については、羽毛内微細構造と発色の関係に関する学会発表と論文発表を行う。
3. 本領域(新学術領域・生物規範工学)の他の研究者との連携を試み、鳥類の構造色についての学際的研究を行う。また、バイオミメティクス研究の社会的啓蒙として、博物館等における展示を行い、研究成果や関連知見の社会還元を行う。