室崎 喬之
研究概要
フジツボ等の海洋付着生物は船舶や漁網、発電所取水口等の海中人工物に対し甚大な汚損被害をもたらす。これらの付着を防止する為に用いられてきた有機スズは海洋生物に対し、内分泌かく乱作用などの深刻な悪影響を与える事が明らかとなり使用が禁止された。その為、海洋汚染を引き起こさない次世代の防汚技術が求められている。
近年、環境負荷の少ない防汚材料として表面微細構造による付着生物の付着制御が研究されてきている。しかし、その作成プロセスは高コストかつ複雑なものである。これまでの全ての防汚技術は静的な表面のみを対象としてきた。しかし実際には生物の表面はダイナミックに変形をしている。本研究では、自己組織化現象によって生じる動的な表面微細構造が海洋付着生物(フジツボをモデル海洋付着生物とする)に与える防汚効果について詳細に調べ、そのメカニズムを探る。
28年度の実施計画
(1)マイクロリンクル表面への階層構造の導入
これまでの研究より、自己組織化により形成される表面微細構造ハニカムフィルムをベースに二次加工する事で、様々な表面微細構造を作成できる事がこれまでにわかっている。 これらの表面微細構造フィルムをマイクロリンクル表面の薄膜に用いる事によって、マイクロリンクルに階層構造を導入し、それらの表面での付着実験を行い、防汚効果を評価する。
(2)マイクロリンクルによるフジツボの剥離
まず始めに歪みを加える前(もしくは後)にフジツボキプリス幼生を着生させる。その後、歪みを加え(もしくはリリースし)付着したフジツボ成体の剥離率を調べる。その際にマイクロリンクルの周期等サイズと剥離率の関係性についても調べる。