平成28年度 公募研究

藤井 秀司

研究概要

アブラムシの中に、自ら排出する蜜の液滴表面を固体ワックス粒子で覆うことでリキッドマーブル(気中液滴型分散体)を作製し、高粘度液体を粉体として取り扱うことを可能にする技術を有するものが存在する。本研究では、高粘度液体である粘着性高分子の液滴表面を固体微粒子で覆ったリキッドマーブルを作製し、粘着剤の粉末化を実現化する。さらに、リキッドマーブルの形成メカニズムの解明を行うとともに、外部応力による粉末状粘着剤の粘着力発現機構を明らかにし、材料化学分野へ研究を展開する。微粒子の界面吸着現象は界面張力を駆動力としており、現行の重力支配下における他律的エネルギー消費型のものづくりに対し、自律的省エネ型のものづくりを可能にする。本研究を、界面化学・高分子化学を学術基盤として遂行することにより「生物規範工学」の学理の体系化に貢献する。

28年度の実施計画

本研究では、前述した目的を達成するために、下記項目について検討を行う。

(1)粉末状粘着剤の作製および構造評価
粘着性高分子微粒子水分散体を内部液とするリキッドマーブルから、様々な条件(温度、湿度、圧力)において水を蒸発させることで粉末状粘着剤を作製し、蒸発速度と生成粉末状粘着剤の構造・形成性の相関関係を精査する。微小液滴は比表面積が大きいため、バルク状態の水と比べ蒸発速度が高く、その内部液の流れの向き・速度が粉末状粘着剤粒子の構造に影響を与えると予想される。粉末状粘着剤の表面および内部の化学組成および構造評価を、元素分析器、電子顕微鏡、X線光電子分光装置、BET装置(現有設備)を用いて行う。また、粉末状粘着剤のハンドリングを考慮すると、流動性の評価は非常に重要である。そこで、粉末状粘着剤の安息角測定を行い、粉体の流動性評価を行う。

(2)粉末状粘着剤の粘着性発現メカニズムの解明
粉末状粘着剤の外部応力(圧縮応力およびせん断応力)に対する初期粘着力(タック)、粘弾性等の粘着特性変化を、タック試験機、レオメーターおよび微小圧縮試験機を利用し評価する。さらに、粘着性発現前後における粉末状粘着剤の表面、内部の化学組成および構造を、電子顕微鏡、X線光電子分光装置を用いて評価する。予備実験において、粉末状粘着剤にせん断応力を加えることで、初期粘着力が発現することをタック測定実験により確認している。粘着性微粒子の水分散体を内部液とするリキッドマーブルの作製が困難な場合、加熱することで粘度を低下させた粘着性高分子を直接用いて粉末状粘着剤の作製を行う。

上記の研究を通じて得られた結果を取りまとめ、学会発表、論文投稿を行う。

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