B01-1
研究概要
サメ肌や魚鱗など、生物表面の凹凸構造のモデルとして、自己組織化によって形成する微細構造、特に周期的な座屈によって形成するリンクル(しわ)構造に着目し、その表面構造と海洋付着生物等の接着性を調査することにより、生物表面における防汚機能のメカニズムを解明し、微細構造による抗付着性機能表面の開発を目指す。また接着を究極の高摩擦状態という新しい視点で捉え、生物表面のトライボロジー特性と接着性の関係を総括的に解明、微細構造を利用した新規機能性材料の作製を目指す。
研究目的
生物の「動き」とその「制御」は、生物表面-環境の界面が持つ作用である。様々な環境に適応した多様な生物群を考えると、その環境下での生物の運動、物質交換、情報獲得のために進化した個性豊かな界面構造、その動き、制御機構が存在する。最近になってバイオミメティクスの観点からその一部の原理が調べられ、抽出された概念が工学へ応用されるようになってきた。
サメ肌や魚鱗など、生物表面の凹凸構造のモデルとして、自己組織化によって形成する微細構造、特に周期的な座屈によって形成するリンクル(しわ)構造に着目し、その表面構造と海洋付着生物等の接着性を調査することにより、生物表面における防汚機能のメカニズムを解明し、微細構造による抗付着性機能表面の開発を目指す。また接着を究極の高摩擦状態という新しい視点で捉え、生物表面のトライボロジー特性と接着性の関係を総括的に解明、微細構造を利用した新規機能性材料の作製を目指す。
28年度の実施計画
これまでに得られた自己組織化を利用した微細構造作製やトライボロジー能に関する知見をもとに、生物学的な視点から機能性表面の作製を継続して目指す。ただし最終年度に当たり、成果の具体的創出に注力する。以下に具体的な研究内容と方法について述べる。
① 動的に表面形状を変形可能なリンクル構造を生物表面、特に魚鱗等のモデルとして利用、表面を海洋生物の粘液模倣高分子ブラシで修飾することで、摩擦特性を評価し、海洋生物模倣表面作製を目指す。
② 海洋付着生物学者の野方らを中心に、上記魚鱗模倣表面や種々の自己組織化微細構造における海洋生物、特にフジツボや付着藻類の接着性を調査、海洋生物の付着と微細構造表面の関係性を明らかにしていく。
③ A01-1班(篠原ら)、B01-5班(劉ら)とともに、遊泳性の異なるサメ肌表面の微細構造をナノスーツ法等を駆使して解析し、微細構造と流体抵抗との関係性を明らかにし、低流体抵抗表面の設計指針を得るとともに、生物学への情報のフィードバックも図る。
④ B01-2班(針山ら)とともに、当該班で得られた知見である自己組織化微細構造の形成技術を、無反射表面であるモスアイ構造に適応し、太陽電池の性能向上を検討する。
⑤ B01-3班(穂積ら)とともに溝構造等を利用したウツボカズラ等を模倣した防汚表面を開発する。
上記と平行してA01-1班のデータベースを活用、微細構造画像データの共有、生物表面の微細構造と機能を調査することで、生物規範的課題の創出を狙う。