計画研究

B01-3

研究概要

 本研究は、生物のサブセルラー・サイズ構造の階層性に起因する動的特性(表面特性・界面特性・内部構 造特性)を材料科学・分子科学の視点から解明し、A01班からの機能・構造情報を活用することで、生物の多様な機能(昆虫の足の可逆的接着性、カタツムリ や蓮の葉のセルフクリーニング現象、自己増幅・自己複製修復機能、等)を規範として、新しいエレクトロニクス実装(可逆的接合、セルフアライメント技術、 防汚/防錆性付与による長寿命化、微細結線)などへの展開を目的とする。
具体的には、以下の3課題(固体間界面、表面、内部構造)の要素技術開発を3つのサブチームで推進するとともに、それらの成果を有機的に連携することで 新しいエレクトロニクス実装技術への応用を目指す。サブチームにおいては、(1)固体間界面(摩擦、接着、非着):可逆接合技術、セルフアライメント等の 要素技術、(2)表面(動的なぬれ性):自己修復、防汚/防錆性、はっ水・はつ油性付与等の要素技術、(3)内部構造(動的な組織体形成):精緻な三次構 造制御に基づく高度機能材料の創製等の要素技術、を開発する。これにより、分子から接合までサブセルラー効果に着目した、階層的バイオミメティクスを創成 する。

p_b01-3_01

研究目的

ナノテクノロジーの進歩により、以前は観察できなかった生物の微細構造が明らかになり、その特性も測定できるようになった。その結果、サブセルラー・サイズの生物表皮構造に優れた機能の発現があることが分かって来た。本研究では生物のサブセルラー・サイズ構造の階層性に起因する動的特性を生物物理・材料/表面科学の視点から解明し、系統的なアナロジーの検証、原理の抽象化、発生学的形成プロセスの解明などをすることで生物規範の基礎を確立し、技術移転を行う。その実践の例として革新的な実装プロセスの確立を目指す。特に、エレクトロニクス実装への応用が可能な基盤技術(可逆的接合、セルフアライメント技術、防汚/防錆性付与による長寿命化、放熱特性の向上など)を開発する。

28年度の研究計画

①昆虫の足の可逆的接着性、セルフアライメント技術:昆虫の脚先構造や魚類の吸着デバイスについて、引き続き系統的なアナロジーの検証(A班と連携)と、形成プロセスの解明(B01-2班と連携)、可逆的接着性を持つ「昆虫の脚型配線」を最適化する(細田、重藤)。濡れ性の違いや泡を利用した「セルフアライメント技術」を開発する(穂積、浦田、重藤、細田、松尾)。ぬれ性の制御を行う表面改質については,超純水蒸気を含有した窒素雰囲気中での紫外光照射手法を主に用いる(重藤)。最終的な導電化には導電性粒子の利用、ハンダ微細加工により配線する「結線技術」を開発する(細田、重藤、松尾)。

②植物の自己修復や分泌の仕組み、長寿命化:1)「昆虫の足の可逆的接着性、セルフアライメント技術」において、これまでに最適化した層状ハイブリッド皮膜(塩水噴霧試験2000hクリア)を実際の実装基板に展開し、長期間実環境化において絶縁性皮膜として機能することを実証する。さらに、これまでに開発された各種要素技術を組み合わせ、バイオミメティクス実装プロセスを確立する。また、2)「植物の自己修復や分泌の仕組み、長寿命化、防汚技術」においては、開発したナメクジの表皮を模倣した自己分泌型防汚材料(SLUG)をB01-1班(大園ら)の自己組織化技術を利用して微細構造化する。得られた微細構造化SLUGの基礎物性(光学特性、防汚性等)について調べるとともに、屋外暴露試験を実施し、表面機能の耐久性についても評価する。(穂積/浦田)

③生物の放熱性等、放熱特性の向上: 1)珪藻殻の種類・構造等が放熱特性に及ぼす影響を調査し、 サブセルラーサイズ構造との関係性を明らかにするともに、珪藻殻の特性を 活用するメタサーフェス構造構築のプロセスを確立する(公募班・前田との連携)。また、構造の最適化を行い、エレクトロニクス実装に向けたモデル 試験を行う。2)放熱特性を高める周期的な構造と生物モデルとの関係性をシミュレーションにより調査し、モデル表面構造の熱的特性評価を行い、生物の新機能を探索する。(前田/松尾)

④エレクトロニクス実装プロセスを確立:信頼性評価については,JIS規格に定められた熱サイクル試験などを行い,導電性粒子を利用して電気伝導性を与えた微細毛 電極と基板側の配線間での接続抵抗値が±20%以内に収まることを目指す.(重藤)

ページの先頭へ戻る