植木 龍也
研究概要
海産動物ホヤ類はセルロースを主成分とする被嚢で体の表面を保護している。同じ主成分をもつ一つながりの
被嚢が接着と付着防止という二面的性質を兼ね備えている。
本研究では付着のしやすさとバナジウム濃度との2つのパラメーターから代表的な4種のホヤを選び、それら
の被嚢の性質を網羅的に比較解析し、接着物質・付着防止物質の単離同定、機能解析を行う。
海水中で固着生活を送る動物の接着性と付着防止の二面性に着目した本研究は独創性と新規性が高く、新規接
着物質(構造)および新規防汚染物質(構造)の開発につながる研究成果が得られると信ずる。
25年度の実施計画
本研究では4種のホヤを対象として、被嚢の構造解析と生化学的解析を行い、それらの相互比較から接着物質
・付着防止物質の単離・同定と機能解析を進め、外部刺激による脱着も加味した物質・構造模倣を目指した研究
を実施する。
平成25年度は、各々のホヤから被嚢を摘出し、被嚢の構造解析と生化学的解析を行う。(1)光学顕微鏡観察で
は種々の染色法によって各成分の分布を明らかにする。電子顕微鏡観察では表面の微細構造と重金属の分布を明
らかにする。(2)被嚢の生化学的解析では、各々のホヤの被嚢中の酸の分析、酸と共存するカウンターイオンの
分析と重金属の定量、二次元電気泳動およびマススペクトル解析によるタンパク質の発現解析を行う。(3)外部
刺激による脱着の検証も行う。基質に固着した状態の4種のホヤに対してさまざまな刺激を与えることで基質か
ら脱着するか否かを検証する。想定する刺激としては、電気刺激と化学刺激(酸、アルカリ)および付着生物の少
ないホヤの被嚢抽出物の効果を検討する。