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著者名 |
原著者:マーク・W・デニー(Mark W. Denny)
訳者:下澤 楯夫(総括班、評価グループ)
水と空気は、全ての生き物の「揺りかご」である。誰でも、魚、エビ、クジラ、コンブなどは海の生き物で、セコイア、ハチドリ、キリン、トンボなどは陸棲だと知っている。陸棲と水棲では、生きる仕組みが大きく異なり、枝分かれしている。しかし、その違いを水と空気の物理的性質の違いで上手く説明できる生物学者は、僅かしかいない。本書は、その解消を目的としている。
生物学的な機能の全ては特定の構造に裏付けられており、生物は全ての機能的構造を常温常圧で作り出す技術を持っている。本書は、生きる仕組みの進化が「水と空気の物理」に如何に拘束され何が許されていたのか、を解説している。単に生物の構造を真似るバイオミメティクスから、生物機能の動作原理を解明して我々の技術に転化する「生物規範工学」を目指す次世代には、必携の書である。
我が国では、生物学者の多くは物理や数学が嫌いで、その訓練を余り受けていない。また殆んどの工学系では、大学レベルの生物学教育を受ける機会さえない。明治以来150年間の、このような人材養成の分業化(縦割り積み上げ教育)によって、生物系研究者と工学系研究者の知識基盤が乖離してしまい、情報交換や相互作用が殆んど起こらない状態に陥っている。自然科学のこの偏った構造は、社会の持続可能性に大きな危険をもたらす。少しでも早く持続可能性を高めるためには、物理・工学系と生物系自然科学の間の知識基盤の乖離を埋め、偏りのない自然理解を進める必要がある。しかし、初等中等教育に始まるこれらの乖離を解消できるのは、長い年月の後になるであろう。
持続可能性の高い健全な社会への、現実的で確実な方策としては、「物理や工学の言葉が分って他分野との共同作業を楽しめる生物学者と、生物学の言葉が分って生物学者との共同作業を楽しめる工学者を育てること」しかない。本書は、両分野を橋渡しできる数少ない教科書の一つである。
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出版社 |
エヌ・ティー・エス、東京 |
書名 |
生物学のための水と空気の物理 |
発行年月 |
2016年2月 |
総ページ数 |
p.444 |
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